志乃夫湯15:50


あー暑い!暑い暑い!!
九月になったのに今頃暑い!今さらなんだッツーの
一日グッタリ家に閉じこもって昼寝も出来ず、勢い余って家を飛び出した。
「水水、、湯、湯ー」「せんと、銭湯ー!」
カコーン、、と行くはずが、ちと早すぎた。
「おニイチャンあと十分早いよ」
と40〜50歳くらいのおじさん、ニヤリとウインクされた。
すでに開店待ちの男女(おじさん、おばさん)が入り口前で井戸端会議を始めていた。
皆、隣のコインランドリーから椅子を持って来て門の前にたむろしている。
 その間を若者が何人か通り抜けるがまったく目もくれていない。
「今日は暑かったなー、やっと今時分涼しくなってきやがったよ」
「そうっスネ」。「風が気持ち良いやぃ」
 先ほどのおじさんと、ちっちゃなリュックサックをかついで椅子にちょこんと座ってニコニコしたまま少しも動かないちっちゃなおばあちゃん、自転車に乗ってやってきたおばさん、それと彼女が議長と察する気性の良いオバチャン。
 議題は先日近所のスーパーで怒られていたおばさんの話。
「年の頃はアタシと同じくらいでね、そのオバチャンたら果物コーナーの巨峰、あるでしょ、あれひと粒食べちゃっててさー、店員がいくらお金払えって言っても払わなくってさー」、というくだり。
「あたしだったらぜったいお金払わせるわよ!」と自転車のおばさん。「だって泥棒じゃない」
「先週は試食させてくれたって言い張っているんだよ」議長
「そんなに食べたきゃ畑行ってくりゃいくらでもあんのになー」とウインクのおじさん。
「それじゃ泥棒じゃない!!」自転車のおばさん。
「それ何処に生ってンのよ」と、議長。、としばらくその畑の話し合い
「それじゃあ泥棒じゃないのよ!!」自転車のおばさん
その間ちっちゃなおばぁちゃんはまったく動かず。
「今日は昼間暑かったからそのオバチャンも頭おかしくなっちゃったんじゃあないのかい?」
「おや?もう開くね」
ガラガラガラ、、、
(やったー!やっとかー)
しばらくタバコを吸いながら井戸端会議を聞いていた僕も、急いでタバコの火を消し、ふと門の方を見る。
すると、いつの間にかちっちゃなおばあちゃん、最前列に列んでいた。