小さな恋のメロディ


 むかしむかしあるところに、とっても可愛らしい女の子と
そしてまたあるところに、好奇心旺盛な、それでいていつも失敗する男の子がおりました。
二人は小学生でした、そしてまた二人には何も接点がありませんでした。
男の子はスカートめくりの常習犯で、女の子はクラスの優等生でした。
唯一の接点と言えば皆で整列をする時、前と後ろに列ぶ事くらいでした。
 ある日男の子はイタズラ心を出し、その女の子にも手を出してみます、が、しかし、
いざその女の子の前に出ると何も出来なく、ショボショボ沈んでしまうのです。
 産まれて初めての罪悪感に男の子は悔し泣きをします。
やがて二人は小学生から中学生へと進学しました。


そこではまた様々な人に出会い、その女の子にも男の子にもいろいろな人がすり抜けて行きました。
そしてその男の子も悔し泣きの事はすっかり忘れてイタズラを続けるのでした。
 ただ一つ気になる事と言えば毎年二月になると無名の宛名でチョコレイトが送られてくる事くらいで、。
 やがて高校生になるために受験をすることになりました、男の子は頭が悪いので勉強が嫌いでした。
中学二年生の男の子ともなれば、頭の中は女の子の事ばかりでした。
「女にはチンチンがついていないんだ」「オレ見た事あるぜ」とか、「あいつチューしたことあるんだって」
そんなことくらいしか考えていませんでした。 男の子はスカートめくりの常習犯からバレンタインデイのチョコレイト強奪犯となって女の子達を追い回していました。
「女、チョコくれよ」「お金出すから」「じゃあオレが買ってくるからお金くれよ」モテないのは必至でした
 そんな折に突然一本の電話が男の子の家にかかって来ます、男の子の母親がそれをとると家中大騒ぎになってしまいます、そうです、女の子から初めてその男の子宛に電話が来たのです。
珍しく大雪の降った次の日の、真っ白な雪の中、女の子ははそこに、チョコンと立っていました。
「渡したいものがあるので今からそちらに行っても良いですか?」「はぁ、」「ひゅーひゅー」母親
なんとそれはかつて男の子が罪悪感に悔し泣きをしたその女の子でした。
 男の子はまたもやショボショボ沈んでしまい、何もできないままチョコレイトを受け取ると、また来た路を一目散に逃げ帰り、部屋に閉じこもって頭を抱え込んでしまいます。 そう、男の子は初恋をしてしまったのです。  しかも、毎年のチョコレイトは、その女の子のイタズラだったのです。


 男の子の頭の中は半ばあふれれかえる程その女の子の事でいっぱいになってしまいました。
優等生の女の子をまねて半狂乱で勉強に励み、好みの少女マンガを狂ったように読み、女の子の好きな歌を一緒に口ずさみ、男の子は必至に学校に通いました。   でも、成績はあまり上がりません
それでもその女の子はニコニコ笑っているのでした、そこで、その男の子は自慢の好奇心を使って女の子を夜のデイトに誘います。女の子は少し不安な顔をしましたが、すぐまたニコニコしてOKしました。
 そして当日二人は夜の遊園地に出掛けます。男の子はイタズラなら負けないぞ、と用意周到に準備をして女の子を楽しませました。  ただ、一度も手をつなげないまま、、
 そして、男の子は少々イタズラが過ぎたのか、女の子の門限の時間を忘れてしまいました。
帰りの駅につくと女の子のおとうさんが怒って迎えに来ていました、男の子は急に恐くなりその場から逃げてしまいます、女の子はおとうさんに怒鳴られながら帰っていきました。
男の子は小一時間ほどその駅をうろついて、家路にむかいましたが、急に引返し女の子の家に走りました、
最後のイタズラが残っていたのです、一日ずっと胸のポケットに隠しておいた小さなオルゴールを最後に渡す。
女の子の家のチャイムを鳴らすと女の子のおとうさんが出て来ました、あと一瞬でおとうさんのげんこつが飛んでくる手前で男の子は「これ、」、と言つてそのオルゴールをつき渡すと走って逃げ帰りました。
 走りながら男の子は産まれて二度目の罪悪感に、またもや悔し泣きをします。
 そうしてそれ以来その女の子との唯一の接点もなくなりました。


そうこうして女の子は優秀高校へ、男の子は普通高校へそれぞれ進学しました。
そうしてまた様々な人に出会い、いろいろな人がすり抜けて行き、女の子は少女に、男の子は青年に確実に成長していきました。
 やがて青年は悔し泣きを語り継ぎ冒険を続け、少女は新たに恋をして結婚をしました。
少女はやがて女性になり、とっても可愛らしい子供を産み、青年は失敗を繰り返してやがて大人になりました。
大人になると、そこには様々な人生の逆流や喜びなどが彼等を取り囲み、また様々な人々が彼等の人生に登場しては去って行きました。 かつての男の子は得意の好奇心で様々な行き過ぎる人々に出会い、また、かつての女の子はその優しさで家庭を必至で支えておりました。  当然二人には何一つ接点はありませんでした。


そんな折にまた、男、彼のもとにまた行き過ぎる人がやってきます。
 彼はまた得意の冒険話を語り、いたずらの数々を語るのでした。


「こんにちは」


「私の事憶えている?」


めずらしく大雪の降りそうな夜でした。